Q. クラウド戦略の活用に関して、M&A 戦略はどのように進化してきましたか?

これまで、クラウドを活用した M&A 戦略のほとんどは、設備投資から資本的支出への移行による IT 効率の向上に主に重点を置いていました。その後、クラウドでの新しい機能の採用が容易であることに鑑みて、買収企業はクラウドを、スケーラビリティ、コンプライアンス、信頼性、耐久性、スピード、効率性を向上させる手段とみなすようになりました。最近では、M&A ストラテジストは、クラウドでのイノベーションを通じた価値創造に重点を置いています。これらのストラテジストは、クラウド上で簡単に実験しており、変更は低リスクです。このアプローチにより、企業は新製品や新市場による破壊的可能性を探り、新たなテクノロジーのプログラム化されたレビューやテストを行うことができます。つまり、クラウドは M&A における単純なコスト削減の要素から、戦略的影響や価値創造の要素へと進化を遂げたのです。

Q. 一般的な M&A のリスクにはどのようなものがあり、クラウドはそれらのリスクを回避するのにどのように役立ちますか?

McKinsey によると、M&A 取引の約 80% で、意図した価値の実現に失敗しています。逆に、The Hackett Group による 2021 年のビジネス価値に関する調査では、クラウドで運用した場合、自己資本利益率と純利益の両方が 83% 増加し、株主総利回りが 55% 増加したことが示されました。ほとんどの人は、イノベーションと成長におけるクラウドの戦略的重要性を認識していません。代わりに、クラウドを IT リソースとして管理することに重点を置いています。これは、投資家が取引への資金提供に関心を持っている理由である潜在的な価値創造という最終目標を無視したものです。企業は、事業で収益を生み出すという約束に関連する戦略的計画に意識的である必要があります。M&A の取り組みの一環として、技術的負債、アーキテクチャの改善、統合ワークストリーム、価値創造のためのソリューションが、収益創出と合致する必要があります。  

Q. M&A におけるクラウド統合にはどの程度のコストがかかりますか?

M&A におけるクラウド統合に関連するコストは、統合の複雑さによって大きく異なります。プリザーベーション型の取引は、おそらくいくつかの小規模な ERP 統合作業を実施するだけで、非常に迅速に実行できます。これとは対照的に、「共生」の目標を達成するには、主要なアプリケーションの完全な再構築を必要とする場合があり、その期間は数か月から 1～2 年に及ぶことがあります。AWS では、お客様が M&A 統合によって支出を削減し、高額なコストを回避できるよう支援するさまざまな方法をご用意しています。また、移行やライセンスの最適化など、M&A 統合に適用できるさまざまな資金調達プログラムもご利用いただけます。

Q: M&A の取り組みに関連する、クラウドにおける主なセキュリティ上の懸念事項にはどのようなものがありますか?

M&A 取引の統合は複雑であるため、M&A 取引の発表から取引成立までの間に、企業に対するサイバー攻撃の数が大幅に増加するのは自然なことです。スピアフィッシングは、他の侵入や流出の手法と合わせて、M&A におけるセキュリティ上の一般的な脅威となっており、その後に強要が行われる場合には状況がさらに悪化する可能性があります。サイバー犯罪者は、セキュリティ侵害が取引を狂わせる可能性があることを知っているため、取引期間全体における脅威のベクトルは、論理的に広範囲かつ深いものになります。例えば、厳しいスケジュールに縛られていて、迅速に物事を進めなければならないというプレッシャーを感じているエグゼクティブは、取引に関連しているように見える悪意のあるメールを、それとは気付かずに開封してしまう可能性があります。このような理由から、取引の発表に先立って、完全なセキュリティ評価を実施する必要があります。

Q. クラウド戦略は M&A の取引前の段階でどのように役立ちますか?

強固なクラウド戦略を可能な限り早期に策定することで、取引におけるリスク、冗長性、技術的負債が増加する可能性を抑えることができます。AWS は、プロセスの早い段階で関与させていただくことで、お客様が目標から逆算して、取引の合理性に沿った価値創造プランを策定する支援を提供します。通常、クロージング作業は厳しいスケジュールで行われます。AWS は、技術的なデューデリジェンス、データクリーンルームの運用、データラボ、ベンチマーキング、セキュリティ評価、技術的負債の評価、学習ニーズの評価、アプリケーションポートフォリオの評価、トレーニングプログラム、さらには市場投入の戦術に関するガイダンスまでサポートできます。当社の AWS パートナーネットワークはさらに、テクノロジーやエンジニアリングに関する専門的なニーズ、商業および財務のデューデリジェンス、法務および他の取引前段階の要素についてもサポートを提供できます。

Q. 当社の Investment Thesis や取引の根拠は、クラウド戦略とどのように結びついていますか?

対象企業の自律性や、新しい親会社との相互依存度を高める必要があるという状況において、クラウド戦略をどのように実行するかは、バイサイドのアプローチに影響を及ぼします。ホールディング型のアプローチでは、監視のための金融システムの統合が必要になることがよくあります。プリザーベーション型のメソッドでは通常、それらの統合を基に、ネットワークの接続性を高め、クラウドサービスの規模の経済を活用できるようにします。吸収型における目標ではさらに進んで、コンプライアンス、スケール、データ、IP などの IT シナジーを統合します。構築をさらに進めて共生状態に至るには、複雑なシステム統合に取り組み、両社間で最善のテクノロジーを中心として組織を整えていく必要があります。

Q. 統合期間中および統合期間後にクラウドにおけるコンプライアンスを維持するにはどうすればよいですか?

HIPAA、PCI DSS、GDPR などのさまざまな規制や業界標準に準拠するには、適切に実行された統合計画が必要であり、アプローチにより異なる場合があります。AWS は、統合全体を通じたコンプライアンスの維持に役立つオプションについてのガイダンスを提供します。

Q. AWS が M&A の取り組みをどのようにサポートできるのかについて、例をいくつか挙げてください。

AWS は、Investment Thesis の作成方法から、取引前、統合、価値の実現に至るまで、その過程でメトリクスや測定結果を提供しながら、M&A プロセスのあらゆる段階でお客様をサポートできます。AWS は、お客様のビジネス目標の達成を加速・実現できるよう支援します。当社は、お客様がイノベーションにリソースを集中できるよう取り組みを合理化し、M&A にかかる時間とコストを削減するのに役立つツールや専門知識を提供します。AWS および AWS パートナーを通じてさまざまなサービスが利用可能となっており、Investment Thesis の構想と計画に役立つイノベーションワークショップから、取引前のデューデリジェンスのための Cloud Diligence Assessments や AWS Clean-Rooms、取引後の統合のためのアプリケーションポートフォリオの評価まで多岐にわたります。 

Q.  100 日間の M&A 計画で製品およびイノベーションの戦略を策定するにはどうすればよいですか?

AWS は、クラウド、ハイブリッド、オンプレミスのニーズへの対応を含む 100 日間の統合 M&A 計画の策定と実行において、お客様をサポートします。当社には、イノベーションの実践、イノベーションの文化、ロードマップの加速、製品戦略、市場投入計画に重点を置いて、何千ものカスタマーエンゲージメントを完了してきた実績があります。100 日間の計画と、その後の計画の策定と実行の両方を整理するのに役立つテンプレート、プログラム、その他のメカニズムをご用意しています。より深いエンゲージメントが必要な場合は、AWS のお客様との間でこれらの計画を策定して実行してきた豊富な経験を有する AWS プロフェッショナルサービスと AWS パートナーをご利用いただけます。

Q. 被買収企業/対象企業における既存のスキルやスキルギャップを知るにはどうすればよいですか?

クラウドスキルは、クロージング後の統合を加速し、イノベーションの目標を実現するために不可欠です。クラウド認定は、組織内の既存のスキルセットを知るための優れた方法です。AWS は、チーム間のスキルギャップを知るのに役立つ学習ニーズ分析を提供しています。M&A 計画にも適用できるワークフォース管理に関するガイダンスを拡張しました。

Q. M&A 取引が終了した後はどうすればよいですか? 買収を確実に成功させるにはどうすればよいですか?

サポートの要素を適切に備えている良好な計画が必要です。AWS は、自動移行ツール、レポート、コスト最適化、ダッシュボード、およびベストプラクティスについてのサポートを提供できます。当社は、お客様が時間を節約し、取引後のエクスペリエンスの曖昧さや混乱を減らすお手伝いをします。AWS のエキスパートは、AWS のツールやガイダンスを活用したり、AWS Managed Services、AWS プロフェッショナルサービス、または AWS パートナーと連携することで、タスクを迅速に完了し、社内チーム設立するためのサポートが可能です。これらはすべて、取引のニーズ、予算、スケジュールに基づいて行うことができます。

Q. 事業売却と、買収または合併のアプローチはどのように異なりますか?

事業売却には、スピンアウト、セルオフ、カーブアウトなど、さまざまな形態があります。イグジット戦略は、タイプごとに大きく異なる可能性があります。親会社からの完全な分離では、分離される事業体が自己完結的に運営できるようにするために、より多くの作業が必要となる可能性があります。売却された事業は、積極的なモダナイゼーションプログラムを開始したいと考える可能性があります。AWS は引き続き、売却されたチームを支援し、利用できる最適なクラウドパスに関するガイダンスを提供するとともに、取り組みを進めていく中でサポートを提供し、成功の可能性を高めるのに役立つさまざまなプログラムをチームにお知らせすることができます。

Q. クラウド戦略は、M&A のイグジット計画や、より多くの資金を集める能力にどのような影響を及ぼしますか?

最終的に買収からイグジットする予定がある場合、買収に向けて会社の準備を整える場合、または新しい投資家からより多くの資金を集める場合、AWS がお客様のクラウド慣行に関連したイグジット準備ガイダンスを提供することで、お客様のリーダーシップチームがこの種のセルサイド株式イベントに備える支援を提供します。その目的は通常、お客様の特定のクラウド戦略がビジネス価値にどのように影響するのかをより良く理解し、投資家と効果的にコミュニケーションをとれるようにすることです。クラウドを利用してより多くの価値を生み出す能力を投資家や買収企業に理解してもらうことができれば、今後の取引において投資家の信頼を高めることができます。また、クラウド戦略でイグジットに備えることは、取引の認識に悪影響を及ぼす可能性のあるギャップを明らかにし、リスクを是正することで、株式の評価を高めるのにも役立ちます。